「糖尿病で食べちゃダメなものはある?」
「血糖値が上がりにくい食べ物を知りたい」
糖尿病と診断され、このような疑問や悩みを抱えていませんか?
実は、糖尿病でも絶対にダメな食べ物は基本的にありません。大切なのは、血糖値を上げにくい食べ方を知ることです。
本記事では、糖尿病の悪化を防ぐために避けたい食べ物や、食事療法を継続するポイントを詳しく解説します。

糖尿代謝内科で勤務経験のある看護師が、わかりやすく解説します。
- 糖尿病でダメな食べ物はあるか
- 糖尿病の悪化を予防するための食べ方のコツ
- 糖尿病で避けたい食べ物
糖尿病と向き合いながら、食を楽しむためのヒントを一緒に探していきましょう。ぜひ最後までお読みください。
糖尿病の食事で「ダメなもの」は基本的にはない
糖尿病と診断されたからといって、絶対に食べてはいけない食品があるわけではありません。ただし、血糖値を上昇させやすい食べ物については注意が必要です。
また、何を食べるかだけでなく、どう食べるかも重要です。食べる量やタイミング、調理法など、食べ方を工夫することで血糖値が改善することがあります。
血糖値を上げにくい食品の選び方や食べ方に気をつけることで、糖尿病の方でも無理なく食事を楽しむことができるでしょう。
▼糖尿病の食事で食べると「よいもの」については、以下の記事で解説しています!
糖尿病とは?食事に注意が必要な理由
まずは、糖尿病とはどのような病気かを知ることが重要です。糖尿病の方が食事に気をつけるべき理由についても解説します。
糖尿病の原因
糖尿病とは、すい臓から出るホルモンであるインスリンが十分に働かないために、血液中のブドウ糖(血糖)が増えてしまう病気です。糖分の摂りすぎ・肥満・遺伝により、インスリンが出にくくなったり、効きにくくなったりすることが原因で発症します。
インスリンの分泌がほとんどない1型糖尿病と、分泌量が減少したり効きにくくなったりする2型糖尿病に分かれます。
食事により摂取した糖分は、インスリンの働きによって筋肉や脂肪などに取り込まれ、エネルギーとして利用されます。インスリンが十分に働かなくなり、血液中のブドウ糖をエネルギーとして利用できなくなると、血糖値は上昇します。
この状態で糖質の高い食事を続けると、さらに血糖値が上昇する恐れがあるため注意が必要です。
糖尿病になるとどうなる?
糖尿病になると、喉が乾く(口渇)やトイレの回数が増える(多尿)などの症状がみられます。
また糖尿病の方は、脂質異常症や高血圧症も抱えているケースが多く、動脈硬化を引き起こしやすいといえます。
動脈硬化とは、動脈の壁が厚くなり弾力性が失われた状態です。動脈硬化により、糖尿病の別の病気(合併症)の発症や悪化につながる可能性があるため、脂質異常症や高血圧症の悪化に注意する必要があります。
糖尿病合併症の代表例は以下のとおりです。
- 腎機能障害
- 神経障害
- 視力障害
糖尿病治療の基本は食事と運動
糖尿病による動脈硬化や合併症を予防するためには、血糖値の管理が大切です。血糖値をコントロールするための治療として、食事療法や運動療法が行われます。それでもコントロールできなければ、血糖降下薬やインスリン注射などの薬を使用することもあります。
糖尿病の悪化を予防する食事のコツ3選
糖尿病の悪化を防ぎ、合併症を予防するためには、食事の摂り方を工夫し血糖値の急上昇を防ぐことが重要です。食べ方のコツとして、以下の3つが挙げられます。
- 血糖値が上がりにくい食べ方を工夫する
- 血糖値が上がりにくい調理法を工夫する
- コンビニ食・外食時の食事選びを工夫する
上記のコツについて、一つひとつ解説します。
1.血糖値が上がりにくい食べ方を工夫する
血糖値の急上昇を防ぐ食べ方として、食べる順番・時間・量を工夫することが大切です。日常の食事で、以下のポイントを意識するとよいでしょう。
- 食べる順番:タンパク質(肉や魚など)や食物繊維を多く含む食材(野菜やきのこなど)から食べ始め、最後に炭水化物(白米やパン、麺類など)を摂取する。
- 食べる時間:食事の間隔を長く空けすぎない。夕食の時間を早めるよう意識する。夕食が遅い時間になりそうなときは、夕方頃に主食の一部を食べておき、夕食時にその分を減らして食べる。
- 食べる量:3食の摂取量ができる限り均等になるようにする。満腹感を感じやすくするため、ゆっくり噛んで食べる。腹八分目を意識する。
2.血糖値が上がりにくい調理法を工夫する
血糖値が上がりにくい調理法や、味付けの工夫を知り、家庭での食事に取り入れることも重要です。
- 調理法:揚げる・焼くよりも、煮る・蒸す調理法の方が油の使用量が少なく、脂質を抑えられる。野菜を調理する際は、少し固めに茹でると噛む回数が増え、満腹感が得られやすい。
- 味付けの工夫:砂糖やみりんなど、糖質を多く含む調味料の使用を控える。減塩を心がけ、高血圧を予防することも糖尿病の合併症対策になる。減塩のためには、出汁のうまみやレモンや酢などの酸味を加え、味にアクセントをつける。
3.コンビニ食・外食時の食事選びを工夫する
コンビニ食や外食では、栄養バランスが偏りやすいため、以下の点を考慮して食事を選ぶとよいでしょう。
- 主食・主菜・副菜がそろった定食を選ぶ
- 主食量が多くなりやすい丼ものは控える
- タンパク質は肉より魚を選ぶ
- サラダや小鉢を追加し、野菜やきのこを摂取する
無料で大盛りにできたり、おかわりができたりするサービスがあると、つい利用してしまう方もいるでしょう。糖尿病の悪化を予防するためには、できるだけ大盛りやおかわりサービスの利用を控えることが大切です。
また、塩分の摂りすぎを防ぐため、麺類の汁や漬物を残すことも重要です。高血圧を予防することは、糖尿病の合併症を防ぐことにつながります。
糖尿病の食事で避けるべき4つの食品カテゴリー

食べ方や摂取量に気をつければ、絶対に食べてはいけないものはありません。しかし、血糖値の急上昇や合併症のリスクを予防するため、避けることが望ましい食事・食べ物はあります。
本章では、糖尿病の方が避けるべき食事・食べ物を以下の4つのカテゴリーに分けて紹介します。
- 糖質が多い食べ物
- 脂質の多い食べ物
- 塩分の多い食べ物
- アルコール・甘い飲み物
それぞれについて、詳しくみていきましょう。
1.糖質が多い食べ物
糖尿病の食事管理では、糖質のコントロールが欠かせません。糖質はエネルギー源として重要な栄養素ではあるものの、摂りすぎると血糖値の急上昇につながります。糖質が多い食べ物の代表として以下の4つが挙げられます。
- 炭水化物(白米・パン・パスタ)
- お菓子(ケーキやチョコレート)
- スナック類(ポテトチップスやポップコーン)
- 果物(バナナ・ブドウ・リンゴ・マンゴー)
2.脂質の多い食べ物
糖尿病の食事管理においては、糖質だけでなく脂質の摂りすぎにも注意が必要です。脂質はエネルギー源として大切な栄養素の一つですが、過剰に摂取すると血糖値の上昇を促進させます。
また、脂質の摂取量が多いと脂質異常症を引き起こし、高血圧・心筋梗塞・脳卒中などの発症リスクが高まります。
脂質を多く含む代表的な食品は以下のとおりです。
- 揚げ物
- 脂質の多い肉類(牛バラ・豚バラ・鶏もも肉)
- インスタント食品やファストフード
- 菓子パンや焼き菓子
3.塩分の多い食べ物
糖尿病の食事管理では、糖質や脂質に加えて、塩分の摂取量にも注意が必要です。塩分の多い食事を長期間続けると高血圧の原因となります。高血圧が持続すると、動脈硬化が進行し、糖尿病合併症を引き起こすリスクが高まります。
高血圧のない場合の塩分摂取量は、男性は7.5g未満、女性は6.5g未満が目安です。高血圧がある場合は1日6g未満にするとよいでしょう。
塩分の多い食べ物の代表例として、以下の3つが挙げられます。
- 漬物や味噌汁
- 加工食品
- レトルト食品やスーパーのお惣菜
特に、市販の漬物やインスタント味噌汁は塩分が高いため注意が必要です。味噌汁には1杯あたり、1.2〜1.5gほど含まれています。
そのため、減塩タイプの漬物や味噌汁などを活用するのがおすすめです。最初は薄く感じるかもしれませんが、2〜3週間ほど継続すると、徐々に減塩の味に慣れていくでしょう。
スーパーのお惣菜を利用することが多い方は、記載されている塩分量をチェックして選んだり、頻度を減らしたりする工夫が重要です。
4.アルコール・甘い飲み物
- アルコール
過剰な飲酒は、すい臓からのインスリン分泌を抑える可能性があり、血糖値の上昇につながります。糖質の高いビールや日本酒を飲み過ぎたり、飲酒と一緒に食事を摂りすぎたりすることも血糖値を上昇させる要因となるでしょう。
このように、アルコールの摂りすぎは血糖コントロールの乱れにつながるため、限度を守ることが重要です。
日本糖尿病学会では、アルコールの適量を1日25g以下と定めています。お酒の種類ごとの25gに相当する量は以下のとおりです。
お酒の種類 | アルコール度数(目安) | 25gに相当する量 |
ビール | 5% | 約500ml(中瓶1本) |
日本酒 | 15% | 約180ml(1合) |
焼酎 | 25% | 約110ml |
ワイン | 14% | 約200ml(グラス2杯) |
ウイスキー | 43% | 約60ml |
参考:厚生労働省 あなたの飲酒量はどのくらいでしょうか? p.2
アルコール摂取量を確認するには、厚生労働省の「アルコールウォッチツール」の活用もおすすめです。
- 甘い飲み物
炭酸飲料やフルーツジュース、スポーツドリンクなどの清涼飲料水には、大量の糖分が含まれています。例えば、炭酸飲料にはスティックシュガー(3g)が15本分、リンゴジュースには9本分含まれています。
これらの飲み物を選ぶ習慣のある方は、頻度を見直しましょう。できるだけ水やお茶などの無糖の飲み物に置き換えることが効果的です。
Q&A:糖尿病の食事でダメなものに関するよくある質問
糖尿病の患者さんにとってダメな食べ物に関して、よくある質問を2つ解説します。
甘いものが食べたい時はどうしたらいい?
甘いものが食べたい時は、食べるタイミングや頻度を工夫し、少量ずつ楽しむのがポイントです。同じ食べ物を食べた場合でも、昼より夜の方が血糖値が上がりやすいといわれていることから、甘いものは昼過ぎまでに食べるのが望ましいでしょう。
1回の間食は、200kcal以内に抑えるようにしましょう。パッケージの裏面のカロリー表記を確認するのがおすすめです。
また、小分けになっているものを選ぶようにすると、食べ過ぎを予防できます。
血糖値を上げにくいおやつの例として、以下が挙げられます。
- ヨーグルト
- ナッツ類
- ゼリー
- ようかん
▼糖尿病の食事で食べると「よいもの」については、以下の記事で解説しています!
生野菜は食べない方がよい?
食物繊維が豊富な生野菜は血糖値の急上昇を抑えるため、基本的に積極的に摂り入れたい食品です。ただし、ドレッシングはノンオイルや自家製のものを取り入れ、かけすぎに注意しましょう。
生野菜にはカリウムが多く含まれるものがあります。糖尿病に加え、腎機能低下によるカリウム制限がある場合は注意が必要です。医師や管理栄養士に確認し、生野菜の摂取量を調整しましょう。
カリウムを多く含む野菜として、以下が挙げられます。
- しそ
- ほうれん草
- トマト
- アボカド
- レタス
これらの野菜に含まれるカリウムを減らす調理法として、茹でこぼしが有効です。野菜を茹でてから水にさらすことで、カリウムを減らすことができます。
まとめ:血糖値が上がりにくい工夫をすれば、食べたらダメなものはない!
糖尿病の食事で絶対にダメなものはありません。しかし、血糖値や合併症のリスクを考慮すると、量や頻度を減らすべき食べ物や食べ方のコツがあります。
血糖値の上昇を緩やかにするため、食べる順番・時間・量を意識し、調理法や味付けを工夫しましょう。極端に制限するのではなく、コツをつかんでバランスよく食べることで、食事療法を無理なく継続できます。専門家と相談しながら、自分に合った食生活を見つけることが重要です。
糖尿病があっても、工夫次第で食を楽しむことは可能です。本記事を参考に、糖尿病と上手に向き合いながら食事を楽しんでいただけたら幸いです。
【参考文献】
日本糖尿病学会 健康食スタートブック p.16.17.28
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